2013年5月6日月曜日

Part of your World

先日、大井町にある四季劇場「夏」にて劇団四季の「リトルマーメイド」を観劇してきました。

わたしはアンデルセンの書いた「人魚姫」が大好きで、子供の頃より大人になってからもっとずっと好きになりました。あのお話を読むとなんとも切なくて苦しくてたまらなくなります。人魚姫の、王子に対する掛け値の無い愛情があんまり純粋で深いから、駆け引きだの嫉妬だの羨みだのでくだを巻いてしまうわたしはどうしたらいいのかわからなくなってしまうんです。
人生で初めての、最後の恋をした相手に人魚姫はただの一言も声をかけることが出来ません。どんな質問をされても、どんなことを聞きたくても何も話せず、歩くたびに足は針を刺されるように痛み、それでも王子の笑顔を見るために人魚姫は夜毎踊りを踊るのです。やがて王子は別の女性を好きになり、そのお披露目の会でとびきりの踊りを踊って人魚姫はふたりを祝福します。彼女がどんな思いでいるのか誰一人として知ることもなく、みんなの目には「兄のように慕う王子の幸せを喜ぶ可愛らしい女の子」として映るのです。


ディズニーのリトルマーメイドは人魚姫を題材にしてはいますが、内容はもっと楽しく軽妙でハッピーエンドとして作られています。ですので今回の劇団四季のリトルマーメイドも勿論、最初から最後までわくわくと楽しめる内容となっています。

ディズニー映画のほうもそうですが、劇団四季のリトルマーメイドも実に色とりどりの舞台装置や衣装で、こと「アンダーザシー」の時などは舞台のどこを見たらいいのか迷ってしまうくらい沢山の魚がでてきては歌い踊ります。また光や音響効果も実によく出来ていまして、本当に水底にいるかのようであったり、海底から水面に泳いで行く高低差を感じたりなど、限られた「舞台」というスペースの中でどのように表現するかをとても考えられていると思いました。
あと、休憩中後ろに座っていらした方のお話が耳に入ったのですが、その方のお話によると今回の舞台装置は「海の中は立体に、陸は平面に」という意図があるらしく、海の中の岩やモニュメントなどは殆どが立体で作られているのに対し、陸での背景や波、岩場、太陽などは絵本のような平面的な作りになっているそうです。人魚姫にとっては陸地がおとぎ話の世界、というのを表現しているのでしょうか。でもこのお話を聞かなければわたしはきっと気がつかなかったし、多分わたしのように気がつかない方ってそこそこいらっしゃると思うんです。そう考えると舞台芸術って奥が深いといいますか、もっとそういうところも気をつけて次から観劇したいなあと感じました。


なにはともあれ、名曲揃いの演目で目にも耳にもとても楽しい!お子様もきっと満足してくれること請け合いです。アンデルセンのように悲しい内容にはなっていませんので、どうぞ安心して皆さん劇団四季のリトルマーメイドをご覧くださいね笑


もしもわたしが一言だけ伝えられるとしたら何をいえばいいのかわからない、という歌詞が劇中にでてきましたが、言葉にすることが出来ないということは本当に本当に辛い事ですね。伝えられるうちに、伝えたいひとに伝えたい事を伝えられるよう、素直に生きていけたらいいな。



星野沙織