2013年5月30日木曜日

オーケストラと森

作曲家の宮川彬良さんが以前仰っていた言葉をふと思い出しました。
「オーケストラは森と一緒、無駄なものがなにもない」
オーケストラはひとの手が作り出したものですから、不必要なものをいれなければ無駄なものがなく作れるのではないかなと思うのですが、森というのは誰が手を加えた訳でなく、これはいらないなどと指導する者も、必要であるからとなにかを足す者もいなくて、滅びるものは滅び、代わりに生まれるものがあって、補い合い、互いに折り合いをつけながら存在し続けているのですね。そう思うと、なんだか畏怖にも似た憧れを感じるのです。自然に存在するものには無駄なものなどない、当たり前と言われればそうなのですが、それでも、森から見たら無駄なものばかり欲しがって囲まれて生きるわたしは彼らのように少しでも生きることが出来たらいいのにと思ってしまうのでした。

買うつもりもないくせに、デザイナーズ家具などをみるのが好きです。こんなデザインよく思いつくなとか配色でこんなにもののイメージが変わるのかとか、または上質な革のバッグや名刺入れや、アンティークの美しい鈍色や青銅色のドアノックなどをみているのが好きです。時代を超えて来たものの出す色というのは、いつもなんだかひとを惹きつけて、そのくせ押し付けがましくなくそこがまた素敵に感じられます。
わたしがいま使っているヴァイオリンはとてもとても古い楽器でわたしの何倍もの年月を生きてきている筈なのに、体はあんなに小さくて、表板はあんなに薄くて、少し弾かないとすぐに機嫌を損ねてしまって、なんだか弟みたいに思えてしまうのです。それでも彼の出す音は年々深くなっていって、時々わたしがびっくりするような年輪の音を出してくれるようになりました。
はじめてあの楽器に会ったのはもう何年前なんだろう。他の楽器よりすこし小さめで、なんだか放っておけなかったあのこ。ワインレッドのような色と音のヴァイオリンと、どちらにするか悩んだ時、決め手になったのは生きてきた年の長さとその小ささと、素直過ぎるくらいの音だった。こんなに長く付き合っているのにまだまだ充分使いこなせない悪いお姉ちゃんだけれど、どうぞこれからもよろしくね。なんて、楽器に語りかけたりするのでした。

ああ、お腹がぽにょぽにょ…お酒と食べ物、控えないといけません。つい欲ばかりが先行してしまいます(>_<)
星野沙織 
HPへ戻る→https://sites.google.com/site/saorihoshinoviolin/